障がいや病気により学校に通えないお子さんやコミュニケーションに困難さがあるお子さんなどを対象に、ICT機器 分身ロボット『OriHime』を活用した遠隔教育等を実施しています。
家庭と学校、病院と学校等を結びお子さんが学習に参加できるようにすることで、所属校等のお友達と共に学んだり活動の共有を図り、また遠隔教育をとおして自立や社会参加へ向けた意欲向上や、お友達やご家族とのコミュニティが深まる効果も期待できます。
『OriHime 』を使った学習支援
分身を使うことで、友達を作ったり、遊んだり、思い出を残す事ができる。
社会とつながることで、こどもの生活は豊かになります。
つなぐプロジェクトでは、遠隔教育(医療・教育の連携)事業に取り組んでおり、その取り組みの一つとして、ICT機器 分身ロボット『OriHime』を活用した、学習支援を行っています。
分身ロボット OriHime
分身ロボット「OriHime」と意思伝達装置「OriHime eye」ってなんだろう?
OriHimeとOriHime eyeには人を笑顔にする力がある。
なぜOriHimeとOriHime eyeが人を笑顔にするのか。
その理由を調べてみた。
OriHime とは?
OriHimeは分身ロボット。病気や障がい、あるいは距離によって、行きたいところに行きたくても行けない人のためのもう一つの身体、それが「OriHime」。
OriHimeにはカメラ、マイク、スピーカーが搭載されていて、学校や家など行きたい所に置き、インターネットを通してタブレットやスマートフォンで遠隔操作する。OriHimeを操作することで、周囲を見渡したり、周りの人と「あたかもその人がそこにいるように」会話ができる。どんなに離れていても入院していても家族や友人との日常の時間を提供するOriHimeは「人と人をつなぐロボット」だ。
例えば教育現場では、身体的、精神的な理由で教室に行けない生徒がいる。OriHimeをその生徒の代わりに学校の自分の席に置く。生徒は入院先や自宅でタブレットやスマートフォンでOriHimeを操作。まるで学校に登校しているように、教室の雰囲気を感じることができ友達と席を並べ授業を受けることができる。
では、「なぜOriHimeじゃなきゃいけないの?」「テレビ電話とどう違うの?」と思われる方もいるかもしれない。OriHimeはテレビ電話とは違い、操作者はOriHimeに搭載されているカメラでその周囲や人を見ることができるが、OriHime側は操作者の様子が見えない。例えば入院している際、ベッドで点滴を受けている様子を見られることなく、これまで通り離れている友達や家族とコミュニケーションをとることができ、操作者のプライバシーが守られる。OriHimeは、操作者がそこにいるかのような存在感を持っている。喜怒哀楽、様々に見える能面を参考にしたデザインで、OriHimeの周りの人が操作者の表情を想像でき、徐々に本人に見えてくるよう工夫されている、まさしく操作者の分身だ。
OriHime eye とは?
OriHime eyeは、病気や障がいによって体を動かすことや話すことが難しい方が周囲の人との意思伝達に使われている「透明文字盤」をデジタル化したもの。視線入力装置やスイッチを使って、透明文字盤を使うように文字を入力し、読み上げることができる。
「透明文字盤」は、介護者が透明文字盤を読み手の目から30㎝から40㎝くらいの位置で持ち、透明文字盤を挟んで読み手と目と目を合わせることによって、視線で文字を確定していく。介護者は読み手が見つめている文字を読み上げ、または指を指して、読み手にYes/Noの合図をもらう。文字盤と読み手の距離、角度、高さなどの調節が重要で、経験が必要となる。その透明文字盤をデジタル化し、より簡単に読み手の意思を伝えられる装置がOriHime eyeだ。分身ロボットOriHimeとつなぐことができ、操作をデジタル文字盤で行える。OriHimeとOriHime eyeをつなぐことで、より豊かに意思や感情を伝えることができる。OriHimeを操作することができるOriHime eye。OriHime eyeはOriHimeの目で世界を見渡せるという所から名づけられた。例えベッドの上にいても、OriHimeが分身となり行きたい場所へ行き、色々な人と出会うことができる。OriHime eyeで自分の世界は広がる。
『研 修』
平成29年8月、遠隔教育(医療・教育の連携)事業に取り組みの一つとして、ICT機器 分身ロボット『OriHime』導入することが決まりました。
導入校は、鳥取県立鳥取養護学校、鳥取県立皆生養護学校、米子市立就将小学校の3校です。
早速「OriHime」について学ぼうと、つなぐプロジェクト、鳥取県教育委員会事務局、米子市立就将小学校の関係者4名で、OriHimeの生まれ故郷である「オリィ研究所」を訪ねました。
「OriHime」と「OriHime eye」の使用について2日間の研修を行いました。
1.OriHimeについて
2.OriHimeの設定
3.OriHimeを操作するiPadの設定
4.OriHimeの操作
5.OriHime eyeの設定
6.OriHime eyeの操作
7.OriHime Switchについて
OriHimeは、iPadの専用ソフトにあるモーションと自由に動かせる腕で、操作者の感情表現が豊かになることや、顔を180度動かすことで周りの様子を伺えます。
OriHime eyeは、視線入力装置で、OriHime Switchは、スイッチ装置です。どちらも、声を発する事が難しい場合など、日常の会話を行えるように最も使いやすい意思伝達を目指して作られたものです。
質問が飛び交う活気ある研修で、参加者からは「研修を受けてよかった」「早く生徒達にOriHimeを紹介したい」と笑顔がこぼれていました。
開発者の思い
OriHimeとOriHime eyeを導入するにあたり、OriHimeの開発者であるオリィ研究所の所長 吉藤 健太朗 氏を尋ねた。
「気が遠くなるほど天井を眺め続け、不安に押しつぶされないために何も考えず時間の経過を待つ経験をしたことはありますか?」吉藤さんから問いかけがあった。
吉藤さんは、その経験者だった。その時感じていたのは「孤独感」だという。それは、物理的にひとりになることを言うのではなく、誰ともつながりを感じられず、この世界に居場所がないと思ってしまう状態。
その経験は、自分だけの体験ではなく、おそらく病気、障がい、置かれた場所など様々な環境によって自分よりもはるかに「孤独」のストレスに苦しめられている人が、世の中にはたくさん存在していると話してくれた。
吉藤さんが「孤独」から脱することができたのは、ひとりのある先生との「出会い」からだった。その出会いは吉藤さんに「人」というテーマで大きな影響を与えた。その出会いは、新型車いすの研究へとつながり、多くの人と出会うきっかけともなった。
研究を進めて行く中で、実際に病気や障がいなどで車いすにも乗ることができない人が多くいることを思い知らされたという。
身体が運べないなら、せめて心を運ぶ車いすは作れないか。「自分の存在」を運び、居場所を作ることはできないか。SNSやテレビ電話ではなく、本当にそこに行ったと思える移動手段。情報ではなく存在そのものの伝達。
身体が動かせなくても、リアルに人と出会い、友達と思い出をつくり、人から必要とされ、社会にも参加できる。その方法を考えることが、「孤独」を解消することにつながると考えた。その考えはOriHime開発へとつながる。
病気や障がいを持っていても、どんなに離れていても、家族や友人との日常の時間を提供する分身ロボット制作へのチャレンジ。何度も試験を繰り返し、多くの人に助けられ「人と人をつなぐロボット OriHime」が誕生した。
吉藤さんは、これからも「孤独」を解消するためのチャレンジを続けるという。それは、OriHimeが成長しつづけるということだと受け止めた。
子ども達に伝えたいこと
「病気や障がいで体が動かせなくても、声が出せなくても願いは叶う。その願いを叶えるため、一緒に未来をつくる。」その力強い言葉は、「孤独」を知り、多くの人と出会い、大切な友人との別れを乗り越え、「OriHime」を生んだ吉藤さんだからこそ言えるメッセージかもしれない。
『導 入』
『鳥取県立皆生養護学校』
平成29年8月17日、県内初として、鳥取県立皆生養護学校に「OriHime」と「OriHime eye」を導入しました。
『米子市立就将小学校』
平成29年8月21日、米子市立就将小学校導入です。
米子市立就将小学校では、鳥取大学医学部附属病院内にある院内学級と就将小学校の教室をつなぐ方法で活用を開始します。
院内学級の生徒役の先生は、iPadを持って別の教室に移動。
黒板の文字や先生の声が届くか、確認を行いながら進めました。
『鳥取県立鳥取養護学校』
平成29年8月24日、鳥取県立鳥取養護学校導入です。
早速、操作実習を開始しました。
先生方は、対象となる生徒を想定した活用方法を実施。操作に慣れていく中で、多様な活用案の意見が飛び交いました。
『教育の現場』
「就将小学校」
OriHimeがつなぐ交流
米子市にある就将小学校には、鳥取大学医学部附属病院に院内学級を持っている。就将小学校と院内学級との交流はこれまで学校行事がほとんどで、他の時間の交流はなかなかできなかった。様々な交流方法を模索していた中、子どもの病気のプライバシーを守りながらしっかりコミュニケーションが取れる「OriHime」に出会った。交流が可能となったその現場を訪れた。OriHimeと生徒達の出会い
院内学級の生徒は県内だけではなく県外の生徒もいる。院内学級で授業を受けるには、担当医の病状などの判断の上、在籍校から就将小学校への転校が必要となる。院内学級では、生徒それぞれの病状に合わせ授業を行う。学級に出られない時は短時間ではあるが教師が個別に病室を訪問し、学習をしている。そんな中、分身ロボットOriHimeが導入された。活用は9月に行われた始業式から始まり、始業式会場である体育館にOriHimeが設置され、院内学級にOriHimeを操作するiPadが置かれた。始業式では、校長先生から院内学級の友達がOriHimeで始業式に参加していることを伝えられた。院内学級の生徒達は、久しぶりの学校の様子をくぎ付けになって見ている。病院に居ながら学校の行事に参加できたことは、生徒達に良い刺激を与えたようだった。OriHimeの活躍
「A君おはよう」生徒達がOriHimeに向かって声をかけている。その声に答えてOriHimeは手を挙げA君は「おはよう」と挨拶をした。ここは、就将小学校の教室。生徒達は、OriHimeを院内学級にいるA君の分身として、当たり前のように受け止めている。A君は毎時間ではないがOriHimeで授業に参加し、休憩時間にはクラスの友達と将棋を楽しんでいる。担任の先生は、教室にA君がいるのと同じように、声をかけあてたりしている。A君は、OriHimeでクラスの友達と一緒に授業を受けられることが、楽しくて嬉しいという。就将小学校には、県外の生徒もいる。その生徒は、近々退院の予定で、退院後は入院前に在籍していた学校に戻る。就将小学校の校長先生は、以前在籍していた校長先生と話をし、学校に戻りやすいように、OriHimeで在籍していたクラスメイトとの交流を行った。クラスメイトにとっても、院内学級にいる生徒の様子は気になるところで、交流後「久しぶりに声を聞いて嬉しかった」と話してくれた。院内学級に居る生徒も「みんなと話ができて、クラスの様子もわかったし、帰る不安が少しなくなった」と話した。
先生方は、院内学級の生徒たちがそれぞれの学校に戻るために、OriHimeでワンステップ踏めることは、生徒達の不安を和らげる効果につながるという。OriHimeは、コミュニケーションの壁を取り払い病院と学校の距離を縮めている。
子ども達をつなぐOriHime
誰にとっても入院という制限は、独りぼっちの感覚であったり、前向きな気持ちにさせてくれなかったりと気持ちの面でも落ち込みがちになる。しかし、生徒達はOriHimeでつながり、お互いに元気をもらっていて、入院中のさびしい気持ちも少し和らいでいるように見えた。先生に話を聞くと「クラスメイトも院内学級にいるA君のことを色々考えることにより、コミュニケーションや友達への気遣いや優しさ、配慮を学ぶにはとても良い機会になっている」という。学習についても、「勉強だけを習得する方法は別にもあるが、クラスメイトと一緒に勉強できているということが、自信にもつながり学習意欲にも跳ね返ってくる。」話してくれた。OriHimeは心身ともに子ども達の健やかな成長に一役かっているようだ。「鳥取養護学校」
子どもたちが自分の意思を伝えられることを期待して
鳥取市にある鳥取県立鳥取養護学校。分身ロボットOriHimeと意思伝達に使われている透明文字盤をデジタル化し、病気や障がいにより発語が難しい方でも、発話ができる意思伝達装置OriHime eyeを使った学習支援に力を入れている。その現場に伺った。可能性を伸ばすために
分身ロボットOriHimeと意思伝達装置OriHime eyeを導入するきっかけは、県教育委員会からの提案だった。鳥取県立鳥取養護学校は、長期入院をされる生徒や重度重複障がいのある生徒がいる。入院先から学校の授業にOriHimeで参加することができ、言葉を発することは難しくても、OriHime eyeを使えば自分の意思を表現できると知り、子ども達の可能性を伸ばすため、ぜひ導入してほしいと申し出た。希望は叶い、2017年8月OriHimeとOriHime eyeが導入された。さっそく、操作実習を開始し使用する生徒を想定した活用方法を思案。9月からOriHimeとOriHime eyeを活用した授業への準備を始めた。子どもたちの笑顔、それが何よりの答え
9月、意思伝達装置OriHime eyeによる学習支援が開始された。使用する生徒は姿勢の維持や発語が難しい状態で、OriHime eyeを使用するのに必要な視線の調整もなかなかできなかった。しかし、OriHimeが動く様子を生徒に見せ反応を確認すると興味を示してくれたので、姿勢の維持や視線の調整ができるよう工夫を凝らし、生徒が気持ちを表出できることを目標に取り組み始めた。最初に、OriHimeとOriHime eyeになれるため生徒の前に設置し動きを見せ、次に視線入力に取り組んだ。学習を行うにつれ、注視できる文字数も少しずつ増え、OriHimeを動かすためのアイコン、例えば「なんでやねん」「はい」などの追視練習も行うようになり、「ここを見て」という問いかけに対しても、応えるペースが上がってきた。一つずつ階段を上がるのと同時に笑顔を見せ、今までにない進歩を感じている。切れ目のない分身ロボットによる学習支援を
OriHimeとOriHime eyeを活用した学習支援は、生徒それぞれのペースで力をつけてきている。その成長は私たちの大きな原動力にもなるものだった。そして、OriHimeとOriHime eyeを活用した学習支援でわかったことは、有効に活用できる子どもは未知数であることだ。私たちは、これまでの概念をすて、一人でも多くの生徒が活用できるよう学習支援に取り組んでいく。そして、この分身ロボットによる学習支援が次の世代の子ども達まで切れ目なく続けられることを心から願う。子どもの持つ未知数の可能性を伸ばすために。「皆生養護学校」
離れていても学校とのよりよい関係を
米子市にある鳥取県立皆生養護学校。分身ロボットOriHimeと意思伝達装置OriHime eyeを導入。分身ロボットOriHimeを活用した遠隔授業支援に力を入れ、通学が難しい生徒達は分身ロボットで今まで難しかった学校での学習に参加している。その現場を訪ねた。子ども達の可能性をさらに伸ばすために
平成29年8月17日、県内で初めて鳥取県立皆生養護学校に分身ロボットOriHimeと意思伝達装置OriHime eyeが導入された。そのきっかけは、県教育委員会からOriHimeについて事例を聞き、集団学習に参加したくても参加できない生徒達が活用できると考えたからだ。導入後、まずは教職員がOriHimeを知るため研修会を開催した。研修会に参加した教職員は、OriHimeを実際に使用し体験することで、受け持つ生徒への活用方法について考えるきっかけとなった。制限の中にあっても一つでも多くの経験を
小学部の生徒のOriHimeを活用した訪問学習を尋ねた。生徒は、重度の心臓病で感染予防や体調を考慮して教師が家庭を訪問し、授業を行う訪問学習が中心だが、時に学校で短時間授業を受けるスクーリングもある。学校が大好きで友達に会うことが楽しみな生徒は、訪問学習やスクーリングの前日から体調を整えるのに余念がない。OriHimeを訪問学習で活用するようになり、さらに意欲を見せているという。ご家族は、訪問学習でOriHimeを使って学校の授業や、行事に参加できることを喜ばれている。これまでは、行事の様子を録画で見ていた。それは、生徒にとってTVと同じようにモニターの中の世界で、自分の存在はそこになく現実味のないものだった。そのため、行事内容を理解することも難しい。しかし、OriHimeで行事に参加するようになり、何の行事なのか理解につながっている。例えば、6年生を送る会では、みんなで一緒に踊るダンスを事前に練習。当日は、家に居ながらみんなと一緒にダンスを楽しんだ。事前の練習やボンボンなどの小道具が何のためにあるのか6年生を送る会に参加することで「このために練習していたんだ」とつながった。OriHimeによって単体の情報がつながり、経験ができることで生徒の理解は進んでいる。OriHimeが広げる子ども達の世界
病院や家から外に出ることが難しい生徒は、豊かな感覚刺激や経験が不足し概念形成に偏りを生じやすいが、OriHimeを使って疑似体験などを重ねることで、児童生徒の障がいを改善し、調和的な発達を促す教育が可能になるという。また、病気や障がいにより対人コミュニケーションに困難さを感じて社会活動への参加が難しい生徒にとっても、社会とつながる手段となり得る可能性もあるという。多くの可能性、多様性を秘めたOriHimeが、学校でも学校卒業後の社会でも子ども達の側にあることを願ってやまない。今もこれからも子ども達の世界を広げる、社会と子ども達がつながる当たり前のツールとなることを期待している。OriHimeの持つ可能性
病気や障がいを持つ子ども達が、これまで中々できなかった友達との交流や自分の意思とその想いにそった表現をOriHimeやOriHime eyeを通して、いつでもどこでも誰にでも伝えることができるようになりました。
一人でも多くの子ども達がOriHimeに出会い、その子らしく過ごせることを願いこの2つの物語を贈ります。
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